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【Unity】 Rigidbodyの回転方法

Rigidbody(剛体)の移動方法については以前書きましたが、回転方法については書いていなかったので今更ながらまとめてみます。

まあ、移動方法とそんなに変わらないんですが・・・。

www.f-sp.com

準備

説明の簡略化のため、本記事内では下記の記号は特別な記述がない限り対応する物理量を表すものとします。

記号 物理量
t 時刻
\omega 角速度ベクトル
\alpha 角加速度ベクトル
I 慣性モーメントテンソル
N トルク

物理量の意味がわからない場合には、記事末尾の付録を確認してください。

Rigidbodyの回転

Rigidbodyの基本的な回転方法には次の四つがあります。

  • rotation
  • angularVelocity
  • AddTorque
  • MoveRotation

以降のサンプルコードでは度々rigidbodyという変数が登場しますが、 これはMonoBehaviourのrigidbodyプロパティではありません(非推奨のプロパティ)。 事前に次のようなコードでrigidbodyを取得してください。

Rigidbody rigidbody = GetComponent<Rigidbody>();

rotation

rotationはRigidbodyの姿勢を変更します。

rigidbody.rotation = Quaternion.AngleAxis(180.0f, Vector3.up);

Rigidbodyをアタッチしたゲームオブジェクトの姿勢を変更したい場合には、 Transform.rotationではなく、Rigidbody.rotationを変更します。

この方法による姿勢の変更は変化ではなく上書きです。 要するに、元々どんな姿勢だったかは一切考慮されません。 そのため、初期姿勢の設定には適していますが、特定の方向に向き直るのには不適です。 変化を表したいときにはMoveRotationを利用します。

angularVelocity

angularVelocityはRigidbodyの角速度ベクトルを変更します。

rigidbody.angularVelocity = Vector3.up * Mathf.PI;

元々の角速度ベクトルを上書きしていることに注意が必要です。

AddTorque

AddTorqueはトルク(力のモーメント)を加えます。角加速度ベクトルを設定すると考えてもいいかもしれません。

rigidbody.AddTorque(Vector3.up * Mathf.PI);

AddTorqueは第二引数にForceModeというオプションがあり、それによってトルクの加え方が変わります(省略した場合はForceMode.Forceです)。

ForceMode 質量 タイプ
Force 考慮 継続的
Impulse 考慮 瞬間的
Acceleration 無視 継続的
VelocityChange 無視 瞬間的

このForceModeは移動の際のAddForceのオプションと同じです。 トルクは力のモーメントであり、トルクを加えるというのは偶力(平行で大きさの等しい逆向きの二つの力)を加えるようなものです。 トルクという概念で扱ってはいますが、実際には力を加えているのでAddForceと同じオプションが利用できるのです。

ForceMode.Force

Forceは物理における「力」です。 何かを押し続けるというような継続的な力を表します。 『プレイヤーがキーを押している間』や『ある範囲にいる間』というように特定の期間中、トルクを与え続ける場合に使います。

AddTorqueの第一引数  N_{Force} I\alpha あるいは  \frac{I\Delta\omega}{\Delta t} を表す値と解釈されます。

I_p を主慣性モーメント、R を慣性主軸からローカル座標軸への回転とすると、

 \displaystyle
    \Delta\omega = (I^{-1} N_{Force})\Delta t = (RI_p^{-1}R^{-1} N_{Force})\Delta t

なので次の二行のコードは同じような意味になります *1

rigidbody.AddTorque(Vector3.up * Mathf.PI, ForceMode.Force);

var I = rigidbody.inertiaTensor;
var R = rigidbody.rotation * rigidbody.inertiaTensorRotation;
rigidbody.angularVelocity += R * Vector3.Scale(Reciprocal(I), Quaternion.Inverse(R) * (Vector3.up * Mathf.PI)) * Time.fixedDeltaTime;

Reciprocalは次のように定義されているものとします。

static Vector3 Reciprocal(Vector3 v)
{
    return new Vector3(1.0f / v.x, 1.0f / v.y, 1.0f / v.z);
}

ForceMode.Impulse

Impulseは物理における「力積」です。 釘を打つときのような瞬間的な力を表します。 『プレイヤーがキーを押した瞬間』や『物体同士が接触した瞬間』というように何かのイベントの発生に対して、一瞬だけトルクを加える場合に使います。

AddTorqueの第一引数  N_{Impulse} I\Delta\omega を表す値と解釈されます。

 \displaystyle
    \Delta\omega = I^{-1} N_{Impulse} = RI_p^{-1}R^{-1} N_{Impulse}

なので次の二行のコードは同じような意味になります。

rigidbody.AddTorque(Vector3.up * Mathf.PI, ForceMode.Impulse);

var I = rigidbody.inertiaTensor;
var R = rigidbody.rotation * rigidbody.inertiaTensorRotation;
rigidbody.angularVelocity += R * Vector3.Scale(Reciprocal(I), Quaternion.Inverse(R) * (Vector3.up * Mathf.PI));

ForceMode.Acceleration

Accelerationは物理における「加速度」です。  \mbox{力} = \mbox{質量} \times \mbox{加速度} なのでForceMode.Forceの質量(及び慣性モーメント)を無視したバージョンになります。

AddTorqueの第一引数  N_{Acceleration} \alpha あるいは  \frac{\Delta\omega}{\Delta t} を表す値と解釈されます。

 \displaystyle
    \Delta\omega = N_{Acceleration}\Delta t

なので次の二行のコードは同じような意味になります。

rigidbody.AddTorque(Vector3.up * Mathf.PI, ForceMode.Acceleration);

rigidbody.angularVelocity += (Vector3.up * Mathf.PI) * Time.fixedDeltaTime;

ForceMode.VelocityChange

VelocityChangeは物理における「速度変化」です。  \mbox{力積} = \mbox{質量} \times \mbox{速度変化} なのでForceMode.Impulseの質量(及び慣性モーメント)を無視したバージョンになります。

AddTorqueの第一引数  N_{VelocityChange} \Delta\omega を表す値と解釈されます。

 \displaystyle
    \Delta\omega = N_{VelocityChange}

なので次の二行のコードは同じような意味になります。

rigidbody.AddTorque(Vector3.up * Mathf.PI, ForceMode.VelocityChange);

rigidbody.angularVelocity += (Vector3.up * Mathf.PI);

MoveRotation

MoveRotationはほぼrotationと同じで、Rigidbodyの姿勢を変更します。

rigidbody.MoveRotation(Quaternion.AngleAxis(180.0f, Vector3.up));

ただし、isKinematicの値によっては微妙に異なる挙動をします (以下、リファレンスに詳細が書かれていないため、リファレンスの内容と実際の挙動からの推測です)。

まず、isKinematicがfalseのときにはrotationと全く同じ挙動となります。 つまり、次の二行のコードは同じ意味になります。

rigidbody.rotation = Quaternion.AngleAxis(180.0f, Vector3.up);

rigidbody.MoveRotation(Quaternion.AngleAxis(180.0f, Vector3.up));

次に、isKinematicがtrueのときにはrotationの上書きとは異なり、変化を表します。 つまり、元の姿勢から指定した姿勢へと瞬時に回転したとみなされます。 これはRigidbodyの設定によってはrotationと挙動が異なります。 例えば、interpolationを設定していた場合には回転の中間状態が補間されてレンダリングされる可能性があります。

実際、処理がどのように違うかというと、 rotationを変更した場合にはそのままrotationの値を変更しているだけなのですが、 MoveRotationを呼び出した場合には回転量と回転時間から角速度を逆算して、 その角速度で回転するように設定しているようです。 isKinematicがtrueの状態なので次の更新処理時には角速度は再度0に戻ります。

その他

前述の四つの回転方法はどれも直接回転パラメータを指定していましたが、 回転は本来、重心から離れた点に横向きの力が加わることで発生します。 摩擦でRigidbodyが意図しない回転をしてしまうのはよくあるバグだと思いますが、 これも重心から離れた表面に接線方向の力が働いたことが原因です。

現実的な回転をさせたい場合には、 移動と回転それぞれを指定するのではなく、 AddForceAtPositionによって位置を指定して力を与えるのが効果的です。 AddForceAtPositionの使い方は位置を指定する以外はAddForceと同じなので過去記事を参照してください。

付録:剛体と回転

Rigidbodyは日本語では「剛体」と呼ばれる物理学上のモデルです。

剛体は力を加えても一切変形しない物体で、質点がたくさん集まって形を成したものとして扱われます。 質点の持つ「位置」や「質量」といった概念に、 新たに「形状*2」という概念が加わったものくらいに考えるといいと思います。

大きさや形のない質点では物体の位置しか考えませんでしたが、 剛体には形状があるため、現在どんな姿勢をとっているかについて考える必要があります。 剛体の位置に関する運動を「並進運動」、姿勢に関する運動を「回転運動」と言います。

剛体の回転運動では、並進運動に用いる様々な物理量に対応した物理量を考えます。 わかりやすいところで言うと「速度」に対応する「角速度」なんかがあります。

並進運動 表記 回転運動 表記
位置  r 角度  \theta
速度  v = \frac{dr}{dt} 角速度  \omega = \frac{d\theta}{dt}
加速度  a = \frac{dv}{dt} 角加速度  \alpha = \frac{d\omega}{dt}
(慣性)質量  m 慣性モーメント  I
運動量  p = mv 角運動量  L = r \times p
 F トルク  N = r \times F

そして、素晴らしいことにそれらに対して並進運動とよく似た関係が成り立ちます。 例えば、ニュートンの運動方程式 F = maのように N = I\alphaが成り立ちます。

角速度・角加速度

並進運動における速度・加速度に対応する値として、 回転運動には角速度・角加速度があります。 これらは通常ベクトルで表されるため、それぞれ角速度ベクトル・角加速度ベクトルと言ったりもします。

回転運動はある一瞬で見れば常にひとつの平面上で行われます。 そのため、どの平面でどれくらいの角度の回転をさせるかの情報があれば三次元の回転を表現できます。 ベクトルはこれらの情報を保持するのに便利で、ベクトルの向きでそれに垂直な平面を、ベクトルの大きさで角度を表すことができます。 よって、角速度・角加速度の表現にはもってこいなのです

慣性モーメント

慣性モーメントは回転において質量にあたる量です。

質量といえば重さと考えるかもしれませんが、理論的には力の影響の受けづらさを表す量です。 また、力が慣性を阻害する存在であることから、慣性への従いやすさを表す量であるともいえます。 少しラフな言い方をするならば「移動させにくさ」です。

慣性モーメントもまた、トルクの影響の受けづらさを表す量であり、回転の慣性への従いやすさを表す量です。 ラフな言い方をすると「回転させにくさ」になります。

慣性モーメントの値は回転軸周りの質量の分布によって決まります。 回転軸から遠い場所に高い質量があるほど回転させにくくなります。 しかし、慣性モーメントの値が回転軸の取り方によって変わってしまうとなると、 剛体の回転させにくさはどう表現すべきでしょうか。

そこで導入するのが「慣性モーメントテンソル(慣性テンソル)」と呼ばれる量です。 これは剛体のあらゆる回転平面に対する慣性モーメントをすべて表すことができます。 回転軸を決めて、慣性モーメントテンソルと演算することで、その回転軸周りの慣性モーメントを算出できるのです。

慣性モーメントテンソルは3x3の行列で表現することができ、 この行列に適切な回転行列を掛けると対角行列へと変換することができます。 この対角行列の対角成分のことを「主慣性モーメント」といい、回転後の座標系のことを「慣性主軸」といいます。

UnityではRigidbody.inertiaTensorが主慣性モーメントを、Rigidbody.inertiaTensorRotationが慣性主軸への回転を表します。 これらの値は質量とコライダの形状からそれらしい値がデフォルトで計算されますが、直接指定することもできます。

トルク

トルクは回転において力にあたる量です。 力のモーメントとも呼ばれます。

そもそも(n次)モーメントというのは距離のn乗に特定の物理量を掛けたものを指します。 トルクの場合は対象が力なので力のモーメントとなります。 慣性モーメントも英語ではmoment of inertiaなので直訳すれば慣性のモーメントです。

トルクは力によって生じる回転力、回転を加減速させる効果を表します。 トルクを与えると慣性モーメントの値に応じて角加速度が加えられます。

トルクは角速度や角加速度と同様にベクトルを使って表現します。

おわりに

移動方法の記事からコピペして書き換えた結果手抜き感がやばかったので、 おまけ程度に剛体の回転について簡単に書いてみました。 正直、自分もまともに勉強したわけではないので正しいかどうか怪しいのですが・・・。 もし何か間違っていたら連絡いただけると助かります。



執筆時のUnityのバージョン:2017.1.0p4

*1:ただし、AddTorqueの呼び出しではangularVelocityの値は即座に変化せず、内部で値が保持されたのちに物理演算時に反映されるようです

*2:密度や分布と言った方が正確かもしれません